新元号、「令和」の出典については、いろいろなところでまとめられているので、ここではブログの趣旨にそって、出典の歌の英訳を紹介して、元号に興味を持った人におすすめの本を紹介してみます。
【令和の典拠まとめ】
— 平林緑萌 (@moegi_hira) 2019年4月1日
・直接は『万葉集』の「梅花歌三十二首幷序」(大伴旅人が書いたか?)とする
・「令月」は『儀礼』士冠礼などにも見える古い語
・そもそも『万葉集』の当該部分、後漢の張衡「帰田賦」の「於是仲春令月、時和氣清」とクリソツでは?
・大伴旅人は『文選』を読んでたっぽいね
《英訳してみよう》
天平二年正月十三日、萃于帥老之宅、申宴会也。于時初春令月 気淑風和梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香。
ムチャブリですね。
《英文》
On the thirteenth day of the first month of Tempyō 2 [730] people gathered at the residence of the venerable Governor-General and held a party. It is now the choice month(令月)of early spring: the weather is fine, the wind is soft(風和). The plum blossoms open--powder before a mirror; the orchids exhale--fragrance after a sachet.
英語訳は、Edwin Cranston氏、『The Gem-Glistening Cup』
A Waka Anthology: The Gem-Glistening Cup
- 作者: Edwin A. Cranston
- 出版社/メーカー: Stanford Univ Pr
- 発売日: 1993/12/01
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ここで、そもそもの読み下しと、現代語訳を見てみましょう。
天平二年正月十三日、帥老の宅に萃(あつ)まり、宴会を申(の)ぶ。時に、初春の令月、気淑(うるは)しく風和(やは)らぐ。梅は鏡前の粉に披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香に薫る。
天平二年正月十三日、帥老の宅に集まって宴会を開く。あたかも初春のよき月、気は麗らかにして風は穏やかだ。梅は鏡台の前の白粉のような色に花開き、蘭草は腰につける匂袋のあとに従う香に薫っている。
原文・読み下し・解釈は、
新日本古典文学大系『万葉集』1、岩波書店
元号の出典については、とにかく
川口謙二・池田政弘著『改訂新版 元号事典』(東京美術選書・平成元年)
が便利です。
出典や改元理由から、私年号、当時の様相などいろいろ書いてあるので、読んでも楽しいです。
たとえば、昭和改元の時に新聞が出典を紹介したが、出典の引用に間違いがあったとかいうことも、わざわざ指摘してあります。
この本では平成改元まで掲載されています。たぶん今年、「令和」改元まで含めて改訂するんじゃないかと思うので(前回の版は平成元年出版)、それを待ってから購入するのがおすすめです。たぶん。
(⇩改訂版がアマゾンで見つかりません。。。なぜ?)
その他、おもしろいものでは、森鷗外の研究があります。
受験だと、森鷗外はドイツ留学した人で、『舞姫』『即興詩人』など、文学で有名ですよね。あと、軍医もしてたってこと。
実は、森鷗外はもともと漢文の教養がものすごい人でした。
それで、天皇の漢風諡号(「醍醐」天皇とか)の出典を探しまくって、「帝諱考」を書き、同じように元号の出典を探しまくった「元号考」を、大正年間に書いてます。
岩波書店の『鷗外全集』20巻に収録されているので、こちらも読んでみると、いろいろと面白いです。図書館で借りるのがいいでしょう。